The Beatle Mania Back Stage Story

【プリプロダクション】



音楽関係の仕事を始めてから30数年が過ぎ、いろいろな出来事があり、
井上陽水氏、浜田省吾氏、山口百恵さん、荒木由美子さん、西邑理香さん、
松田聖子さん、岩崎宏美さん、片平なぎささん、裕木奈江さん、
アレンジャーの萩田光雄氏、星勝氏をはじめとして、ここにはとても書ききれないほど、
いろいろな素晴らしいアーティスト・ミュージシャンたちとも沢山出会い、
楽しい仕事も、大変な仕事も沢山して来ました



現在フリーのプロデューサーということでたまたまというか不幸にもというか、
かなり自由な時間が出来てしまいました。
そこで一度自分の原点を見直すことにしました。
今までのレコーディングでもいろいろなアイデアや考え方など
誰もやっていないと自負して新しいことに取り組み、大成功だと喜んだことも、
ビートルズがすでにやっているとあとで気がつくこともかなりありました。
これはもう昔から本当に好きだったザ・ビ−トルズしかないだろうということで
昔々リアルタイムでザ・ビ−トルズをコピーしていたことを思い出し、
まだカセットテープすらない時代、
モノラルのプレイヤーで本当にレコードの溝がすれて音が変わってしまう位、
聴いて聴いてコピーしたことが、どの位のレベルだったのかを確かめることにしました。
あの頃とは違い自分の家にもささやかながらいろいろな音響機器もあり、
ザ・ビ−トルズ関係の音源はブートレグを含めるとレコード、CD、ビデオなど、
ビ−トルズだけでも1000枚ほど入るラックには入りきらず、
本や雑誌も日本で出版されたものは95%くらいは購入している程度には、
地味にファンを続けていましたので、とりあえず資料には事欠くことはありません。
コピーバンドをやっていた初期の曲をステレオのCDで聴いてみたり、
譜面を確かめたり、本を読んでみると以前完璧だと思っていたコピーが
実は嘘ばっかりだったことを思い知らされました。



ジョンとポールのハーモニー・パートが入れ替わっていたり、
ギターが何回もダビングされていたり、驚きの連続でした。
当然30数年間ザ・ビ−トルズのデビュー以来聞き続けていたにも関わらず、
改めてひとつひとつの音を聴いてみるとこんな事もやっていたのかという事が
1曲ごとに何カ所も出てきました。
時間は不幸にして沢山あります。徹底的に1曲ずつ分析することにしました。
10曲位なんとなく分析が出来たときに、一度音にしてみたいと思い、
一緒によく仕事を手伝って貰っている佐々木孝之氏に話をすると、
彼もザ・ビ−トルズは研究してみたいという嬉しい話でした。



いざ録音を始めてみると、
分析して同じように演奏した筈なのに出てきた音は
かなりイメージとは違っていました。
30年以上音楽作りをしていた事もあり
耳はかなり微妙な音まで聞き取れるようになっていました。
そのため不幸にも、自分たちの演奏も唄も
かなりオリジナルとは違うぞということがハッキリと解ってしまい、
もっと細かく緻密にコピーしていこうということなりました。



ちょうどその頃、たまたま松田聖子さんのアルバム・シングルの
プロデュースの話が舞い込み、喜んで引き受けることになりました。
そのため当然、時間もあまり自由にならなくなってしまったのですが、
佐々木氏とは週に1日はザ・ビ−トルズに当てることにしました。
それでも1年くらいで分析した10曲ほどは録音が終わりました。
なんとなく自分でもこの辺でいいかなと思う程度には仕上がったので
昔の仲間や仕事仲間のザ・ビ−トルズにちょっと興味がありそうな人を見つけると、
どんな評価されるかの怖さ半分、自慢半分で聴いて貰いまくりました。
想像以上に面白がられ、自分だけで楽しんでるのは勿体ないとの意見もあり、
調子に乗って、分析した解説書や譜面付のCDを作ってみようということになりました。
しかしいろいろな著作権の問題や権利関係を考えると、
譜面をつけることで採算がまったく採れないことが解ってきました。
そこで耳だけでコピーが出来るというCDのみの企画にすることになりました。



ザ・ビ−トルズのバンド・サウンドに関しては
教則ビデオや解説書も各種出ていますので、
こちらはVocal中心にのポールやジョンのハーモニー構成のおもしろさを
解説するサウンド作りをしていこうと思いました。
そのため録音が終了した時点では楽器の音が分けて聞けないという部分は
多少我慢をして貰おうということでしたが、
ギターなどの細かいフレーズをチェックしたいという意見がかなり出て来ました。
CDのカラオケだけでは
ハーモニーや楽器の音を聞き取るのはかなり難しいということで、
発想をガラッと変えコンピューターでそれぞれのパートを単独で聞けるようにと、
またまた企画の変更をいたしました。



当初レコーディングのいくつかのパートは
他のメーカーの楽器で代用していたのですが、
全体で聴いていたときにかなり似ていると思っていた音が
ソロにしたためにサウンドの違いがハッキリと解ってしまいました。
それぞれの楽器の音質をできるかぎり同じサウンドにしたいと思い、
その時点でもエピフォン・カジノ、ギブソンJ-160Eや
リッケンバッカーの325と360/12弦のギターは持っていたのですが、
グレッチ独特の乾いたような枯れたような音が他の楽器ではどうしても出ませんでした。
そこで、カントリー・ジェントルマンの66年を購入いたしました。
なんとか似た音が出るようになると今度はベースに不満を感じ始め、
ヘフナーの500/1キャバーンモデルを購入しました。
次はアンプでした。
やはりVOXのアンプ独特のサウンドもAC−30でなければ出せないということになり
またまた、大枚をはたくことになりました。
かなり似せた音が出せるようになり、本番用の録音がスタートしました。



録音が終わり単独の音を、コンピューター用にチャンネル毎に移す作業で
またまた問題がおこりました。
それぞれのチャンネルの音がばらばらに出て来てしまいました。
そのためにせっかく微妙な間をコピーしたにもかかわらず、
まったくサウンドになりませんでした。
本職の仕事そっちのけで約3ヶ月ほどかかってその問題を解決して
マッキントッシュG3で再生してみると、見事タイミングも合い一安心したところで、
ウィンドウズはどうするの?ということになり、
またタイミングをとる作業が延々と続きました。
それもなんとか出来上がり、もう大丈夫ということで
i-Macで再生してみると中身はG-3であるにもかかわらず
タイミングがずれてしまい、またまたいろいろなMacで試すことになりました。
理由はわかりませんが、
Macの場合2タイプを用意すれば大丈夫ということになり
コンピューターの問題はなんとか解決しました。
ただその為にコンピューターを購入しなければならず
一気にMAC G-4、i-Mac、Windowsと
それまでのコンピューターをあわせると4台に増えてしまいました。



もうすでに遊びの域は越えてしまいました。
友人達からも、そういうのはもう趣味ではなく、
道楽と言うのだとのご指摘を戴き、自分が道楽者だったことにやっと気がつきました。
それならばこの際、
ジャケットのデザインから解説、営業、宣伝、制作、唄、演奏と
レコード会社のやることをすべて自分でやってみることにしました。
有限会社アイウィルを作り、インディーズ・レーベルとしてリリースすることになりました。


【録音秘話】

I want To Hold Your Hand

This Boy

Please Please Me

Ask Me Why

She Loves You

All My Loving

A Hard Day's Night

If I Fell

HELP !

YOU CAN'T DO THAT
BECAUSE
NOWHERE MAN
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