【録音秘話】

She Loves You


まず最初に悩んだことはイントロのタムの音でした。
ドドン、ドドンという1秒にも満たない長さですが、
ウルトラ・イントロ・クイズなどでもわかるようにほんの一瞬聞いただけで
別の曲のように聞こえてしまうのです。



スタジオでかなりいろいろな種類のチューニングで
タムの音を録音してきて差し替えたのですが
音が違うために妙に目立ってしまうのです。
歌に入る前にそこが気になって仕方がありません。
気になり始めるとほとんど歌う気がしなくなる程でした。
この曲はやめようかという話になったほどでした。
でも、ここを解決しないとビ−トルズは全曲こういうことがあり、
先に行くことは出来ないということで、
出来るところまでやってみようと気持ちを奮い立たせ
またスタジオに行きタムを録音しました。
1回、3時間ほどのスタジオでしたが、4回ほどスタジオに行って録音しました。
ほんの1秒の音のためにです。
これ以上はリンゴに彼のドラムセットで叩いて貰わなければ
無理じゃないかというところまでは自分たちなりに録音したのですが、
タムが気にならなくなったところで、ふと気がつくと
あれだけ苦労した結果がタムを気にならなくするためだという、
まるで絵を描くときに沢山の色を使い油絵やクレヨンやアクリルやを使いまくった結果、
透明にするというような妙な矛盾を感じました。コピーの宿命なのですね。



ギターではあのジャラーン・ジャラーン・ジャラーンという特徴的なフレーズ、
これも解説にも書きましたが意外とみんなやっていません。
かなり沢山のコピーバンドを見たり聞いたりして来ましたが、
「Please Please Me」のオクターブ奏法が一ヶ所だけ
ハーモニカのメロディと異なったフレーズを弾いるところと
「She Loves You」のこれをやっているバンドはそれなりの音を出してました。

4人の楽器のみでアレンジされている曲なので、
ハイハットの半分開いた音などがかなりサウンドのかなめを占めていて、
それが上手くいけばギターがなくても雰囲気が出てしまうほど
ドラムスが重要なポイントでした。

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