【録音秘話】

BECAUSE


この曲の場合、苦労話というと録音そのものでした。
使用楽器がBaldwin Electric harpsichord
Moog IIIp modular synthesiser
Epiphone Casino
Rickenbacker 4001
の4っつしか有りません。
楽器編成の少ない曲ほど、それぞれの楽器の音が似ていないと
最終的にサウンドが似てきません。
そんなコター百も承知で、録音はスタートしたのですが。
ハープシコードの演奏は相棒の佐々木孝之氏の努力やなんやらで、
ジョージ・マーティンの間違いや、パンチインの際の消えてしまった音なども含め、
ほぼ完コピ出来たんじゃないの?という感じに出来たのですが、
ムーグ・シンセサイザーで弾かれている部分の録音をし終わって
聞き返してみると違うんです。全然違うんです。
深みもなく、芯もないディジタルそのものの音でした。
音作りの時は、これ以上は無理だろう、というところまで似せたつもりでした。
ちょっと時間をおいて聴いてみると、
またまた、例によってこれでは歌う気がおこらない病が出てきてしまいました。
例によって、気持ちを奮い起こし、解決策を考えました。
ただ、いくら考えても基本的にムーグの音とディジタル・シンセの音では同じ音になる筈もなく、
これはもう探すしかない、せめてアナログ・シンセを、
出来ればムーグ・シンセサイザーをという結論がでました。
今時、アナログ・シンセを使っている人を捜すのも難しいと悩んでいる時、
佐々木氏が、二人の共通の知人であるアレンジャーの久米由基氏が以前、
ミニ・ムーグを持っていた事を思い出しました。
やっと連絡がとれ、久米氏のお宅にお邪魔して、
ベースの打ち込み用に使用中であるミニ・ムーグをラックからはずし、
久米氏の人の良さにつけ込み、半ば強奪状態でお借りしてきました。

この間、お互いのスケジュールなどで約1ヶ月間中断しました。

出ました。レコードと同じ音です。
ムーグの音が解決し、歌う段になって何回も聞き直していると、
今度は今までそれ程気にならなかった筈のカジノの音がちょっと違うんじゃないの?
ということになりました。
音そのものは結構似ていると思ったのですが、空気感が違います。
聴けば聴くほどアビーロードの2スタの空気感というより
VOXアンプの前にマイクを立てました。という音(そのまんま)に聞こえてきました。

ここで偉い佐々木氏は考えました。一度録音したギターの音を、アンプで再生し、
部屋の反対側にセットしたマイクで拾いました。
距離を測りつつ似た空気感が出るまで一人で一生懸命、頑張っていました。
その間僕はというと佐々木氏の愛犬(今大流行のチワワ)と戯れていました。

歌に関しては、録った音をアメリカのワシントン近郊に住む西邑理香さんの愛夫
DAVE CRIGGER氏に便利な便利なインターネットで送り、
電話で発音チェックしてもらうという作業を3回くらいのしたところでOKが出て、
無事終了しました。

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